京都の紅葉シーズンが年々、遅くなってきている。
え~い! せめて京料理を満喫してやろうと先斗町(ぽんとちょう)や木屋町(きやまち)あたりへ繰り出してみても、最近はありきたりな居酒屋やチェーン店ばかりだし、かといって本格的な京割烹の懐石料理なんて手が出ないし・・・・・・待てよ? 考えてみれば、京都ならではの無冠の帝王的な料理ってなんだろう? と僕は三条河原町の高瀬川のたもとで腕組みしてしまった。
京都の大衆的な料理といえば“おばんざい”、ちなみに「お晩菜」と書く。
献立にはいわゆる京野菜が多く使われ、えび芋、かも茄子、九条ねぎ、万願寺(まんがんじ)とうがらしなど、雅な呼び名にウットリしてくる。そんな京野菜の旨味を昆布や鰹の一番ダシで引き出したおばんざいには、やはり“まったり”とか“ほっこり”というおいしげな京言葉が当てはまるのである。
「でも、どうして京都なのにニシンなの? そもそも北海道の魚でしょ?」
確かに、昭和時代までニシンは小樽や函館など北海道周辺の海が漁場で、どちらかといえば関東以北の土地で食べられていた。
山に囲まれた盆地の京都では、とにかく海産物が手に入りにくかった。
今も“ニシン蕎麦”や“昆布巻きニシン”などは定番中の定番メニューで、「身欠きニシン」と呼ばれながらも、おばんざいには欠かせない無冠の帝王なのだ。 |